『オセロー』追記

さて観劇から4日経った。

時間が経ったからこそのあれやこれやを。

 

まず本編と全然関係のない話から(笑)

カテコ最後の神ちゃんのお手振りについて。

私嬉しくてお手振りしたけど、歓声上がってた時もあったらしくそれ”ジャス民マナー悪いな”って文脈で叩いている人いた。所謂愚痴垢ってやつなんだろうけど。WEST周りって結構いるね。辛口の忠告なら別にいいけどさ。誇大な話にして現場にも居なかった癖にファンやメンバー叩く人。見てて何だかな〜となる。

”神ちゃんがマリウス見学来た時に、休憩時間にファンが騒いで、それ苦々しく見てた神ちゃんなら、自分が客演の舞台で歓声上げるファンを苦々しく思っているだろう”と。

いやそれさ、確かに見学者見て騒ぐファンもマナーがイマイチだけど、ファンがいること判っててその場にいたらそりゃ騒がれるwジャス民て若年層も多いからさ。その辺はイマイチ。

でもってオセローカテコラストのお手振りは…ありゃ懐深い主演の芝翫さんが神ちゃんに”ファンに手を振ったげな”と促してたように見えたから、振り返すぐらいは別にいいと思う。歓声も…あったのかな?気付かなかった。そこまでの気になる程のことではなかったけどな。

ただ、所謂愚痴垢にマナー悪いと言われるのは嫌なので、そこそこにしましょう(笑)

 

さて話変わって。

何故イアーゴーはオセローをあそこまで陥れようとしたのか。なんかピンと来なかった。

で、いろいろ検索かけて見てた。実はイアーゴーとオセローとデスデモーナの三角関係的な話書いてる人もいて。それもイアーゴーとオセローの恋仲的な。えええwwwそんな話だったのか?!

それはともかく(笑)

やっぱ悔しかったんだろうな。イアーゴーは。

きっと彼は誠心誠意オセローに尽くしていた。でなければ、オセローがあれほどイアーゴーを信頼していないだろう。オセローは、イアーゴーを誠実な正直者と称していた。妻を縊り殺す程に彼の言葉を信じていた。

それだけ誠実にオセローに尽くしていたにも拘らず、だ。オセローは自分の副官にキャシオーを任じた。キャシオーとは?育ちの良さで副官になった男。ということは、自分の誠意は氏育ちに負けた。オセローは自分の誠意より家柄を取ったのだ。

イアーゴーにとってはそれは大きな痛みだろう。裏切りと言ってもいい。

自分の誠意を踏みにじって家柄の良い男を副官としたオセロー。

誠心誠意尽くしていればいただけ、その痛みは大きい。傷は深い。

自分の誠意はオセローにとっては通俗的な家柄にも劣るものでしかない。

そういった恨みなのかな?と。

 

でもさ。オセローって、実はキプロス戦とかの為の外人部隊の傭兵的なポジションでしかない。生まれ育った国では元王族かもしれないが、そんな話もヴェニスの貴族達には単なる暇潰しのお話代わりにしか過ぎない。

ここヴェニスの人々はオセローを”ムーア人”と呼ぶ。面と向かって。現代人からすれば相当に差別的に聞こえるが、妻のデスデモーナさえそうなのだから、当時はそういうのが当たり前なんだろう。

傭兵の黒人の戦しか取り柄のない、でもだからこそそこそこのポジションを得ているピュアなオッサンのオセローが、貴族で白人で可愛いきっと年若い女の子のデスデモーナと恋仲になり、デスデモーナの親父をだまくらかして致してしまった。

信じていたオセローには裏切られ、そのオセローはなんと可愛い女の子と結婚までして幸せの絶頂。おまけに目の前にはデスデモーナに振られたロダリーゴーが居る。

こりゃ恨みを晴らせと言わんばかりだ。

多分最初はそんな感じだったのかも。

じゃなけりゃいくらピュアなオッサンでもそこまでイアーゴーを信じてないだろうし、途中イアーゴーのオセローへの接し方は誠実そうだった。あれは騙そうとか腹黒く思っている訳ではなく、単にいつもの習い性で誠実に仕えていただけだろう。

 

ロダリーゴーは結構コミカルな感じなので、ここでのイアーゴーは結構砕けた感じ。はいはいはいってロダリーゴーをいなしてる。

 

イアーゴーの妻エミリアは、今までは結構貞操観念ない感じの役柄だったらしいが、ここでは徹頭徹尾誠実な人柄になっている。何も知らず夫に頼まれるままハンカチを夫に手渡しただけで、誰にも害を成そうという気はさらさらなくて只の良い人。

 

 

さて。

イアーゴーは、オセローを嵌めようとしたが、この結末は望んでいたんだろうか?

デスデモーナへの嫉妬の炎に焼かれ、どうしようもなくなるオセローが見たかっただけなのかもしれない。

副官キャシオーには相応の妬みはありそうだったが。

妻を刺した時点で、もう物事はイアーゴーの手から離れていたんだろう。次に登場したイアーゴーは、もう壊れた自分の世界から出て来ない。

散々キツい取り調べを受け挙句放心しているようにも見えるが、彼は別にデスデモーナの結末にもオセローの結末にも心を動かされていない。

どうでもいいに違いない。

何故なら、彼の愛した誠心誠意上官に仕えるという日々は既に崩壊していたから。

社会のしがらみや家柄といったものは、自分の誠意などというものより遥かに堅固であることへの、ささやかな意趣返しか?

自分が副官になりたいとかいった現実的な望みを果たそうとした行動や動機ではない。既にもうどんな結末が待ってようと斟酌していない。

だからこその、あの壊れた世界の中にいるイアーゴー…かなと。

 

1幕最後はまだ地球儀をもて遊ぶ気持ちだったんだろう。ちょっと幼子のような。好奇心か?この先自分の行動で状況がどうなるのか。統べるのは自分であるという気持ちだったのかも。

だが、元々芽を孕んでいたに違いない夫と妻の破綻はイアーゴーの思惑など関係無しに坂道を転げ落ちていったのかもしれない。

 

3幕のバックの鏡張りは何の意味があるんだろう。

夫婦のベッドがあるのは、蜷川踏襲か?

あ、やっぱオープニングは原作は街路でしたw

あのゴンドラは意表を突くよね。ヴェニスだからアリなんだろうが。

2幕の赤い月も好きだった。月って地表近くは赤く見えるんだね。

シェイクスピア詳しい人はオマージュ的な話もしてた。ハムレットとその対になる人間の鏡を使った演出が、ハムレット幕切れにあるらしく、最後はそれとの関連か?とか。

そうなのか?

でもって、あの最後の最後に兵士らしからぬ格好をした男達が押し入って来て、バタバタと皆殺しにして去って行ったのは…何だったのか(笑)

よく覚えてないが、その後生き残ったイアーゴーがのろのろと立ち上がり、舞台正面に膝を突く…だっけ?

あの押し入った男達は?

キプロス戦に乗じて、ヴェニスからの人々を屠った地元の島民かな?とも思ったが。

勝手に自分達の島に土足で上がり込んで来たヴェニスの貴族達。そんなものは要らないと、拒否する実際にそこで住んでる人々。

ーーーかなと。

全てを無に、という象徴かなとも思ったが。異文化の衝突の中にある差別意識やなんやかんやを、混沌と共に力でなぎ倒したラスト。

力技だなぁ(笑)

 

そして、そこに残るのは、壊れたイアーゴー。なすすべもなく。

 

 

 

うーん。

何のこっちゃの感想です。申し訳ない。

イアーゴーは何なのかな。

この演出家さんは何を伝えたかったのか?神ちゃんは何を伝えたかったのか?

そしてシェイクスピアは?

 

訳分からんw

まぁシェイクスピアって日本の歌舞伎みたいなものかな?と思う。その時代のキャッチーな話題を娯楽的に上演。当時はそれほど御大層なものでもなかったんだろう。

その時代の研究や文学としての研究のテーマではあるだろうが、当時は単なる娯楽なんじゃ。

だから、今でも単に楽しめばいいかなと。

 

神ちゃん格好良かったよ。悪巧みを考えるところや仕草のキレ。

台詞はイマイチ聞き取りにくいとこもあったが。

シェイクスピアのイアーゴーをあの年齢で演じることのできる僥倖を、私は見たかった(笑)

ジャニーズWEST神山智洋が、あのカンパニーの中でちゃんと存在感を示すことができていた。

前にアゲイン現場出る時に流星が、

「”ジャニーズから何か使えん奴が来た”とだけは言われたくない」

から必死でやったと。またジャニーズWESTのメンバーはそれぞれ自分がグループを背負っている自覚がある。きっと神ちゃんもそうだったに違いない。

 

そして今回『オセロー』を見たことによっていろいろ考えることもできたし、シェイクスピアの一篇が知れた。

ありがとうございました。