『溺れるナイフ』を3回観てしまったー其の2

溺れるナイフ』感想の続きです。

 

・山の中。

きっとコウが隠れ家的に使ってる小屋へと続く径だ。
ここも印象的だね。緑と落ちる傘。

ストーカー男の呪いに絡め取られて1年過ごした夏芽とコウ。
若さの持つ根拠のない万能感と、現実で味わう無力感。
そこに負けたコウ。そりゃそうだろ。好きな娘を助けられず、目の前でたたきのめされている。
夏芽はまだそのコウを見て『助けて欲しかったのに』と望めばいいだけだ。
ざっくりとした匂わすだけのSEXシーンより、あの布団に包まって勢い良く反転するコウの方が印象的だった。
あと夏芽を上に乗せちゃってるコウとかw体格絶対夏芽の方がいいだろw
終わって、
「もうこれきりにしよう」
と言うコウに、
「逢う事?それともこういうこと?」
と聞く夏芽。
やっちまったんかいwww
この台詞でやっと分かる。
しっかしか細いな、コウ。
ここで生きるという彼。うん。彼の場所は此処だろう。土地や神さんと繋がっている彼。
選ばれた者という点で夏芽とは共通点があったが、夏芽は雄々しく前に進む人間だろうし、コウはひっそりと人間界からは孤高であの場所にいる人間だし、大友は安らかに平凡な人の営みを送る人間なんだろう。カナは…分かんない(笑)持つ者に憧憬するが、自分の目で見ることしか見れてない。自分の世界が一番。
大友はまだ知っている。違う世界があって、そこは自分の世界ではないことを。

・このスナックは?
大友んちのスナック?親父漁師じゃなかったんかいw
いそいそスナックを皿に持ってる大友可愛い。
「別れよう」
という夏芽に、状況が把握できてない大友。あの間がいいね。
「うん………ん?」
みたいな。
地道に現実的な打開策を図る大友。
「遠距離でもええよ」
違うんだよね。
「コウか?」
寝ちゃってるもんね。

原作はもっと複雑だった。
大友に触られるとどうしてもストーカー男のことを思い出しフラッシュバックが起こり、生理的に受け付けられない夏芽。……大友気の毒過ぎるわ。

夏芽に被さってのシーンの大友切ない。
ここからカラオケ歌うってのが凄いw

歌う大友の姿映らなくても夏芽の演技のバックにずっと大友の歌が流れている。長回し
「東京いくんだろ」
だっけか?歌の途中の叫んでた言葉はアドリブだったらしい。シゲ、
『アドリブ使って貰えて良かった』
と。
ここも監督の言う、
『止めないのでやり通して下さい』
のシーンの一つだったんだろうな。

最後の大友いいよね。
ちゃんと夏芽は笑顔になったし。

最初観た時は、シゲのカラオケシーンときき、どんな風にシゲ歌うんだろ?と思ったが、観てるうちにそういうの忘れて普通に大友として観てた。

あれジャニーズWEST重岡大毅じゃないよね。大友だ。

結構素のシゲに見える様にナチュラルな演技をしているけど、それは結局大友の演技なんであって。

ちゃんとシゲと監督が大友を作り上げている。決してそれは素のシゲじゃない。ファンは、

『きゃー!素のシゲっぽい』

と思うかもだが。

素のシゲに近い大友を演じているんだろうな。そしてそれを撮ってる。

だからきゅんきゅんするが、それは大友の可愛らしいや男の子っぽさや男前さについて、であって。シゲではない。

でもまるでシゲ、若しくは大友ナチュラルだと観客に思わせたのは監督の手腕だろうな。

・この辺の時間経過がよく分からない。
東京に戻ると決めて出る日の話なのか?

・「俺はイカ焼きに青春を捧げるんじゃ」
原作では親友だったコウと大友の数少ない絡みのシーン。普通にフラットな関係なのが伝わる。
シゲが、
「あそこでわだかまりがあると、大友の負けた感が出てしまうから」
と言ってた。
2人の関係性はがナチュラルだよね。好きだ。

・踊るコウ。

これちょっと羨ましかった。まんま菅田将暉のPVやんwシゲのこういうの見たかった〜。てな訳でこのシーンの意義はあんま感じなかったな。緊迫感はあったけど。

・ここな。
なんで小屋に夏芽がいるのか。そこになぜストーカー男が出現するのか。不思議。
描写がないから唐突に感じる。原作もどうだったか覚えてないw
おそらく最後に夏芽はあの小屋に来たんだろう。祭りの夜だからコウが小屋には居ないことを承知で。
訣別か?
そこに恐らく後を付けてきたストーカー男が現れる。
呪い。
呪縛。
絶対に逃れられない呪いをかけに男は来た。

それに対して夏芽は、
「コウちゃん、殺して!」
と叫ぶ。
この辺の心理がよくわからん。
「カナちゃん邪魔しないで!」
と、カナを部外者にする。
きっと2人にかけられた呪いを再び撥ね返す為に必要なことだったのかもしれないが。
2人の呪いからの解放の為に。

でも結局はそれは更なる呪いを発動しただけだった。
夏芽をまっサラな自由にして翔び立たせる為に、コウは我が身を挺す。
でもコウはこの土地を離れたはしないから、それはそれでいいのかもしれない。
神さんが見ている。

カナは…勝ったと思ったのかな?夏芽に。コウを支えて(弱みを握って)あの土地でずっとコウと幸せに…か?
きっとそれは砂を噛むような生活だし、カナもそれを分かって、どこかで別れるのだろう。

シゲが、
『大友には幸せになって欲しい』
と。
そうだよね。いい奴だもん。

・受賞シーン。
これ何年後の設定だろう。夏芽若いぞw
でもって受賞作品が作りがちゃちいと言われてた。映画賞受賞作品なら、もうちょいなんかやり様があるだろうとw
勿論その後のコウとの対比があるからこそだろうとは言われてたが。
この映画の男優誰だ?名前知りたいw

あの暗いトンネル内で一瞬映る夏芽とコウの表情と、そこに至るまでの表情。
ストップモーション。

このラストは、映画のオリジナルラストらしい。
言われてたみればそうだな。でも原作の方がほっこりしたけどな。
オリジナルラストとは思わなかった。ここから原作に続いて本当のラストは原作のラストなんだろうなと思ってた。

原作は一応ハッピーエンドだけど、映画は違う道を歩く2人……なのかな?

 


は〜って思わずため息が出そうな映画だった。止めてた息を吐き出すというか……。
ふつうの幸せ青春恋愛映画じゃないよな。確かに。
3回見ちゃったけど(笑)

大友は主演2人に比べたら出番少ないけど、本当にいい役だった。
『殿、利息でござる』も、サダヲちゃんの息子探してた監督が当時ドラマやってた重岡大毅を見つけてくれた。
それもこれも、彼の、

『目の前の仕事を一生懸命やる。それがきっと先に繋がると信じて』

という思いでお仕事してるからこそだろう。光一氏の言葉と余りに重なっていて、ちょっとびっくりしたが。
そんなとこが、シゲを好きなとこかもな。

はぁw
見終わってほぼ1ヶ月後の感想文ですwww

すみませんw同じ事2回書いてるとこあるw

読み返して判明したが直すの面倒でwすんませんwww 

 

 

 

ーーーおまけ(映画のその後)ーーー

 

「お前、よぉお?」
手元の面の型作りから手を離さず、久々に訪ねてきた幼馴染の大友の声を聞く。

「この前の映画賞の授賞式見たか?」
「いや」
「見てなかったん?夏芽ちゃん出とったで?」
「……」
黙々と手を動かす俺に、邪気のない声で、
「相変わらず綺麗やったのぉ」
と。
「そんなん…」
「ん?」
「そんなん見んでも…」
夏芽は綺麗じゃ。
昔と変わらぬ雄々しい歩みできっと自分の道を進んでいる。
「見んでも?」
分かりきった答えを言いそうになり、
「ほうやのう。夏芽やしのう」
ちょっと微笑んでそう伝える。
それで伝わる。
こいつには。
「相変わらずのコウじゃ」
とこっち向けて浮かべた笑顔は昔のままで。

「そういや結婚したんじゃったのぅ」
と大友に。
「ん。安定期入ったから、海を見せに来たんじゃ」
と、大友がお腹の大きい仕草をして見せる。
浮雲のな」
いつも変わらない男。
「俺らの育った場所じゃ」
海のような男。
「赤ん坊楽しみじゃな」
「おう!」
明るく返してくる。

「お前らも、な」
「え?」
「きっとそんな日が来るけぇ」
「……」
「大丈夫じゃ!」
思いっきり背中を叩かれる。

「ほなの」
「おぅ」
夕陽の中、友が去って行く。
『またな』

俺は
いつでも
ここに
居る。

浮雲に。

なぁ……夏芽……。